桜野季節4

それを聞き、また不機嫌そうな顔になる。


(ほんとに悪いことしちゃったな…)


星歌はまじまじと男を見た。

そこで気付いた。

その人は制服を着ていなかった。
黒っぽいスーツを来ている。


この人って…


(先生…?)


「いや、大丈夫だ。それよりお前、怪我はないか?」


「は…はいっ!全然ないです!」


目の前にいる人が教師だと分かり、何だかさらに緊張してしまった。


「星歌!大丈夫だったか?」


冬馬が人混みをかき分け、急いでこちらへ向かってきた。


「あ、全然平気だよ」


「そうか、よかった。ところで―」


と、先生(らしき人)の方を向く。


「ああ、えっと…助けてもらって…」


「悪いが、俺はそろそろ行くぞ。用事があってな。お前ら、気を付けろよ」


「え…あ、ありがとうございました」


そう言うと、校舎に向かって歩いて行ってしまった。


「私たちも、教室に行ってみようか」


と、星歌は冬馬を見るが、冬馬は今だにさっきの人が歩いて行った方を見ていた。