桜野季節3
「きゃ…!」
星歌は悲鳴を上げ、腕の中から飛び退いた。
「何だ?せっかく助けてやったのに、失礼なやつだ」
不機嫌そうな声。
星歌は、目の前に居る男を見上げた。
その瞬間
時間が止まったようだった
スラリとしていて、とても整った顔立ちで
舞い散る桜の中にいるその人は、とても絵になって思わず見とれてしまう。
(綺麗な人…)
男に綺麗という言葉はおかしい気がするが、今目の前ににいる男にはその言葉がぴったりだ。
何も言わない星歌を見て男は、さっきまで不機嫌そうだった顔がさらに険しくなる。
そういう顔ですら綺麗だ
「何見てやがる?俺の顔に何か付いてんのか?」
その言葉でハッと我に返った。
「あ…すみません、そういう訳ではなく…」
と、口ごもる。
(ど…どうしよう!私ったら、何て失礼な…)
「そ、そのっ!助けていただいたんですよね?ありがとうございました!」
勢いよく頭を下げる。
「それと…さっきはすみませんでしたっ!」
少しうつむきながら言い、今回は小さく頭を下げた。